IHIが世界のライバルに追いつき、追い越すために。航空・宇宙・防衛領域が求める「変革人財」とは

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重工業の雄として、170年に渡り日本という国を根底から支えているIHI。これまでは新卒のプロパー(生え抜き)社員が大半を占め、良くも悪くも一枚岩で企業文化を培ってきた。

その伝統を覆して、キャリア採用に力を入れ始めた部署がある。航空・宇宙・防衛事業領域、通称「空領域」だ。

なぜ今、空領域は新たな人財を求めるのか。空領域と人事部、それぞれの視点から、IHI 空領域の挑戦と求める人財についてつまびらかにする。

コロナ禍でついてしまった世界との差を取り戻す

「IHIは、未知の地域や領域を探索するエクスプローラー的な会社。新しい技術や事業で課題解決を成し遂げる文化で、これまでもさまざまな世界初を世の中に提供してきました」と誇らしげに語るのは、航空・宇宙・防衛事業領域で副事業領域長を務める原田敬氏だ。

その言葉通り、170年の歴史のなかで、日本初の蒸気軍艦、東京中央停車場(現東京駅)の鉄骨工事、日本初の国産ジェットエンジン、日本初のタワー型ボイラー、イプシロンロケット打ち上げなど、さまざまな分野で日本を支えてきた。

人事部 採用グループでグループ長を務める安野淳哉氏 は、「もうひとつ、IHIには大事にしている文化があります」と語る。それは、人を大事にすること。経営理念のひとつにも、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」と掲げられている。だからこそ、個を大事にして、尖った考えを取り入れる社風があるという。

そんなIHIの事業領域は、「資源・エネルギー・環境事業領域」、「社会基盤事業領域」、「産業システム・汎用機械事業領域」、「航空・宇宙・防衛事業領域」に大別される。なかでも、「グループ経営方針 2023」に基づく中期経営計画において、成長事業として位置づけられたのが「空領域」こと「航空・宇宙・防衛事業領域」だ。

空領域は、先進技術により、航空輸送、防衛システムおよび宇宙利用の未来を切り拓き、豊かで安全な社会の実現に貢献することを目的としており、航空エンジンやロケットシステム・宇宙利用、防衛機器システムを主な事業としている。

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原田敬(はらだ・たかし)氏/IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 副事業領域長。IHIに2000年7月に入社、グループ会社のIHIエアロスペースにて、ロケット用の複合材製品の開発に携わり、2022年4月より現職。現在は、副事業領域長として、空領域のモノづくり、トランスフォーメーションを担当し、空領域の変革など、様々な改革に取り組んでいる。

「民間エンジンでは、軽量化や電動化、SAF(持続可能な航空燃料)への対応など次世代航空機エンジンによるカーボンニュートラルに向けた取り組みをしています。また、宇宙分野では人工衛星で取得した地上や海中のデータの利活用、防衛分野では防衛予算の増額や防衛装備移転の推進による防衛事業の拡大や次世代戦闘機エンジンの開発などを推進。どれもさらなる成長が見込める取り組みです」(原田氏)

日本のジェットエンジン生産のトップシェアを担い、ロケットに関しても、ロケットの開発から打ち上げまで、設計・解析・生産技術・品質保証・品質管理・実験・射場整備などさまざま分野に携わっている空領域。いわば、日本の空におけるリーディングカンパニーなのだが、それだからこそ、課題もあるという。

「正直にいえば、先頭を走っているからこそ、周りが見えなくなっている部分もありました。以前は、エンジンやロケットの専門的な知識が優位性の条件でしたが、次世代のジェットエンジン開発やロケットの人工衛星で取得したデータの利活用では、専門性だけなく、新技術における価値創造が必要。新しい知識や考え方が求められます」(原田氏)

課題はほかにもある。原田氏が強い危機感を覚えたのが、世界との差だ。IHIは、プラットアンドホイットニー社 、GE Aerospace社といった、世界の一流エンジンメーカーとの共同開発も多く、コロナ禍前には活発な交流があった。しかし、現地でのやり取りが難しかったこの3年で、キャッチアップが大きく遅れたと感じている。

「以前は、出張や共同開発でライバルがやっていることを目の当たりにして、そこに追いつけ、追い越せと開発を進めていました。しかし、外から生の情報が入ってこなかった3年間で、世界のライバルはDXやGX(Green Transformation)を進めて、戦略を大きく変更していました。悔しいですが、差がついてしまった。我々も早急にDXやGXに取り組み、製造工程、設計の変革やカーボンニュートラルを推し進めなくてはいけません」(原田氏)

SIerや通信、金融、ITまで。さまざまな分野から変革人財を求める

新技術における価値創造やDX、GXの推進に不可欠なのは、人財だ。空領域にも優秀な人財は多いが、圧倒的に数が足りないという。原田氏は、「外からの知見を広く集めて、次のステップへの壁を乗り越えていかないと、さらなる成長は叶いません」と力を込める。求めるのは、空領域に進化をもたらす「変革人財」だ。

「空領域には専門知識が必要な業務、研究も多い。もちろん、そういったスペシャリストも歓迎しますが、特殊な領域でもあるので、大学院で研究して新卒で入社している社員も大勢います。スペシャリストだけでなく、生産技術も設計も、ある程度わかるといった、マルチカラー的な人財をより求めています。次世代航空機エンジンは、さまざまな知識や新たな設計、製造手法が必要なので、どのような経験、経歴もきっと役立つはずです」(原田氏)

次世代航空機エンジンは、カーボンニュートラルの取り組みを受けて、さまざまな要素技術が求められている。生産にあたっても、DXによるデジタル化が欠かせない。また、宇宙分野も数多くの業種業態が関わり、ビジネス化を模索しているところだ。そういった意味では、空領域が必要とする変革人財も、同業である重工出身者や産業機械メーカーだけに留まらず、SIer、IT、金融、商社、通信、電機メーカーなど多岐に渡る。

原田氏も「大企業だけでなく、中小企業やベンチャー出身者の応募も多い。ものづくりだけでなく、資材調達やデジタル人財など、幅広い力を集結したいと思っています。なにより、空領域を変えてやる、といった変革心を持った、チャレンジングな人は大歓迎です」と語る。

採用を担当する安野氏は、「2023年度は200人程度のキャリア採用を計画しており、なかでも空領域に関しては、2024年3月までに約100人の採用を目指しています」と意気込む。すでに入社している変革人財も、その経歴やスキルは多彩だ。

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安野淳哉(あんの・じゅんや)氏/IHI 人事部 採用グループ グループ長。1994年第一勧業銀行(現:みずほ銀行)入行、2019年11月サニーサイドアップグループ人事部長、2023年5月より現職。自身も「変革人財」の一人として、人事/採用の変革に日々挑戦。「自然と技術が調和する社会」というIHIのあるべき姿を目指し、持続的な高度成長を実現するための採用戦略を描く。

「例えば、キャリア採用マーケットで数少ない航空機の型式認証のご経験のある方や、資格保持者がかなり少なく専門性が高いセキュリティ資格を持った方、また今後のカーボンニュートラルの実現に向けて、電動化技術の第一人者も迎えることができました。これまでのIHIにいないタイプやより高いスキルや経験を持った人財を、着々と採用できていると思っています」(安野氏)

安野氏が採用時に強く意識していることは、入社後のアンマッチを起こさせないこと。面接の様子を「1次面接から求人部門と人事部が候補者の意向をしっかりヒアリングしています。どのような仕事を希望するのかに最も重点を置いて、応募者が納得するまでお話をさせていただいています」と語る。ここにも、個を大事にして、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」と考えるIHIの社風が見てとれる。

組織改革では、大事な文化は残しつつ働きやすいようにシステムを変える

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空領域が現在、熱心に取り組んでいるのは、変革人財を活かすための組織改革だ。その必要性を原田氏はこう語る。

「これまでの制度は、新卒社員を一から教育して、年功序列でキャリアを重ねるといったもの。しかし、それが成功体験になって、世の中のスピードについて行けなくなっていたことも否めません。新しい技術をピックアップしたり、業務や設計のプロセスなどを一から見直したりするには、成功体験に囚われず、組織自体のあり方を変える必要があります」(原田氏)

安野氏は、「新たに仲間となる変革人財がこれまでの当社のカルチャーに染まってしまっては意味がありません。そのままで実力を発揮できるような働きやすい環境を整えるために、人事面での変革にも着手しています」とより具体的な制度設計に踏み込む。

「新卒で入社し、同じ初任給から始まり、同じ人事制度の中で育ち、マネージャーポストを目指す。これまでの制度は長期雇用を前提とした画一的なものだったと思います。しかし今後は、多様な人財、多様なバックグラウンドを持たれた人財に活躍していただくために、処遇の柔軟化をはじめ,職務定義や指揮命令系統などの面で通常とは異なるマネジメントを行うなどの検討を進めているところです」(安野氏)

一方、原田氏は「制度などを時代に合わせて変化させることは必要。しかし、変えてはいけないこともあります」と力を込める。それは、個を大事にして、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」と考える文化だ。

「個人の尖った能力を活かす文化は残しておかないといけない。変えるべきは、業務プロセスなどのシステムです。大事な文化は残しつつ、働きやすいようにシステムを変える。それによって、自由な発想でチャレンジできる働きやすい組織を目指していきます」(原田氏)

今後、キャリア採用が続き、さらに増え続けるであろうIHIの変革人財。安野氏は、IHIのトップである井手博社長が語ったある一言が忘れられないという。それは、「変革人財を受け入れる、我々一人ひとりが変革することが大事だ」という言葉だ。キャリア採用だけが変革人財な訳ではない。IHIのプロパー社員も一緒に変わっていく。そういった覚悟を感じさせる言葉である。

最後に、原田、安野の両氏に、これからキャリア採用で新たに仲間となる変革人財に求めることを訪ねた。

「防衛、民間、ともにジェットエンジンでは国内トップメーカーで主導的立場ですが、今後は世界にも追いつき、追い越す意気込みです。宇宙分野に関しても、これからは利活用ビジネスを見据えて、社会貢献につなげていきたいと考えています。そのためにも、キャリア採用の社員とプロパー社員が、良い意味でぶつかって化学反応を起こし、空領域の成長を加速させてほしいと思っています」(原田氏)


「当社を志望される方は、技術で社会に貢献したいという、高い志と熱意を持たれている方ばかりです。その熱い思いをベースに、これまでの枠に囚われない新しい視点で、当社に風を吹かせてください。航空エンジンのトップメーカーだからこそできるチャレンジがあると思っています。そこに思い切って挑戦していただける方と一緒に働きたいですね」(安野氏)

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