アビームの新規事業創出支援が目指すのは、産業の垣根を超え未来を見据えた価値創造


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新規事業創出で成果を出せている日本企業はどれだけあるだろうか。既存の事業における改善と効率化により成長することも重要だが、リソース不足や人材育成に手をこまねいて、新規事業創出に着手しきれていない企業も少なくない。幹となる新たな事業を創出して育てなければ、企業の持続可能性は危うい。

そうした中で、未来の価値とテクノロジーの組合せをトータルにデザインし、5年、10年、20年先を見据えた価値創造と変革支援を目指しているのがアビームコンサルティング未来価値創造(Future Tech-value Innovation)戦略ユニットだ。このユニットのダイレクターである安藤有紀氏に、「デジタル×新規事業創出」に携わる意義と醍醐味について話を聞いた。

技術を深く理解し、クライアントと対等にディスカッションできるまでに

DX(Digital Transformation)という言葉自体が誕生したのは2004年だが、2010年頃からSNSの普及やIT化が進み始め、2018年に経済産業省がDXレポートを発信したことがきっかけとなりDXという言葉がビジネス界に浸透し始めた。

そんな世の中の流れに応えられるコンサルチームを、ということで2015年に現在の未来価値創造戦略ユニットの前身となる専門組織が立ち上がった。

現在、ダイレクターとしてチームをけん引する安藤氏は、当時をこう振り返る。

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安藤有紀(あんどう・あき)氏/アビームコンサルティング 未来価値創造戦略ユニット ダイレクター。新卒で入社した大手百貨店で情報システム部門のシステムエンジニアを務め、2008年にアビームへキャリア入社。流通業を中心に業務改革・システムコンサルティングや新事業立案プロジェクトを経験した後、DXIセクターの前身であるIoTセクター立ち上げに参画。現在は、製造・公共など幅広い業種におけるデータ活用やデジタル導入案件をリード。また、企業と企業を跨いだデータ連携・活用を推進する「データ流通」を今後のビジネステーマとしてソリューション開発も推進中。

「最先端のデジタル技術やデータを活用したコンサルティングを行う部門として、IoTやAI(人工知能)、デジタルマーケティング、スタートアップとの共創といったさまざまなテーマのビジネスを開拓する組織が立ち上がったのが始まりでした。

しかし、最初から順風満帆というわけではありませんでした。新しい領域への挑戦でしたので、まずは実績と信頼を積み上げていくことが必要でした。そこで、業界団体に参加し実証実験を進めていくメンバーに入れていただくことからスタートしました。

新たな事業創造のパートナーとしてクライアントから信頼を得るためには、その業界のビジネスと技術に対して造詣が深い専門家の方々と対等にディスカッションできるレベルにいる必要があります。技術と一言で言っても、ものづくり設計技術、化学技術、製造プロセス技術、建築技術、都市インフラ維持技術、交通関連技術、農業技術など、日本には多種多様で高度な技術が存在しています。

さらに、各社それぞれ特有の技術を保有し、日々その技術に磨きをかけています。そういった複数の高度な産業技術やデジタル技術の組み合わせがあって初めて未来価値を創造できるのですが、異分野の専門家同士のコミュニケーションには難しさがあります。そのため、媒介者であるコンサルタントが、例え自分自身が技術開発の経験を持っていなくても、その技術領域の専門家と同じ目線で各産業技術の本質を語り、議論できなければなりません。私自身、組織の立ち上げ当時はかなり苦労しましたが、産業技術への理解が深まるにつれて、日本の高度な産業技術へのリスペクトがより深まりました。技術理解の視点は、今でも変わらず大切にしています」(安藤氏)

未来価値創造戦略ユニットはクライアントからの期待に応えるべく、一人ひとりのコンサルタントのスキルアップはもちろんのこと、高い専門知見を有している事業会社やスタートアップ出身者も採用を強化した。実際に安藤氏も流通小売系企業の出身である。その他にも、プロセス制御エンジニア経験者や自動車関連設計エンジニア経験者、エンタメ会社での新規事業立ち上げ経験者など多様な人材が仲間に加わっていった。その結果、IoT/AI等のデジタル技術と産業技術、そして、それらを活用するさまざまな分野の課題を多面的に熟知しているチームとなっていった。

「例えば、ある化学メーカーさまでは、営業担当者がお客様のニーズを聞いて開発に情報連携しながら徐々に仕様を固め、試作を繰り返して製品化しています。お客様のニーズをどのように聞きだすか、ニーズを樹脂仕様にどのように変換しレシピを調整するか、職人的な暗黙知が支えている世界です。この開発プロセスと川下産業連携のデジタル化は、経験値の浅い会社ではできない高付加価値な樹脂開発の高速化と、グローバルのニーズに出合う機会を広げ、競争力を高めることになります。

ただ、実現にはお客様のコア技術やバリューチェーンの前後を含めた産業の全体構造を深く理解している必要があります。コンサルタント自身がデジタルとクライアントの保有する技術の両方に対する深い理解をしてこそ、その二つを融合して新しい価値を生み出すことができると考えています」(安藤氏)

自分で意思を持って先端技術をインプットするからこそ、コンサルタントとしての成長につながる

現在、未来価値創造戦略ユニットは約150人の規模に。多様なバックグラウンドを持つ人材構成は、チームのイノベーションを支え、お互いが切磋琢磨できる環境を醸成している。

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「デジタルを活用したさまざまなプロジェクトにチャレンジができることや大学との共同研究、スタートアップをはじめとした企業との共創、外郭団体への参加を通じ、最先端の技術に触れ、活用する機会があることに惹かれて、当社への入社を決めてくださる方が多くいらっしゃいます。

さらに、アビームには部門を超えて連携し合えるカルチャーがあることも当社で働く魅力だと私は感じています。例えば、メンバーから私に何か質問されたときに、未来価値創造戦略ユニット以外に適切な人が他チームにいるのであれば気軽に紹介しますし、紹介された人も真摯に向き合い教えてくれます。

インターネットや書籍などの公開されている情報から学ぶことも大切ですが、やはり経験者から聞いた手触り感のある情報は説得力が違います。多様な一次情報に触れられる機会が多いことは、顕在化された課題解決だけではなく、潜在的課題を見つけ、より本質的な課題解決を行うコンサルタントにとって魅力的な環境だと思います」(安藤氏)

産業技術について知見を深める機会が豊富にある未来価値創造戦略ユニットだが、両輪のもう一つであるデジタルの知見はどうだろうか。先進性という意味で注目したいのは、コンサルタント一人ひとりが取り組んでいるソリューション開発等の活動である。

コンサルタントは、一般的にはクライアントワークにフルコミットすることが求められる。未来価値創造戦略ユニットでも当然、クライアントへの提案・プロジェクトデリバリーが重要なミッションである。しかし、取り扱うテーマが先進的であるがゆえ、会社からの投資を受けて、ソリューション開発・リサーチ・ネットワーキング活動・エコシステム構築・インサイト発信等に一定の分量注力することが認められている。そうすることにより、クライアントと共に新たな技術の創出に寄与できるのだ。例えば、安藤氏は次のような先進技術に関する共同研究を推進している。

「数年前に『企業間データ流通』というビジネステーマが新たに出てきた際に、意見交換をさせていただきたいと東京大学大学院でデータサイエンスを用いてアイデアを共創するという研究に取り組まれている先生をご紹介いただいたことがきっかけです。

私は自身のソフトウェア開発やデータモデリング経験から、データが異分野同士のコミュニケーションを媒介する上で重要であると痛感していました。加えて、先生の研究テーマは、各企業が持つデータの概要情報を可視化し共に取り組める課題や解決策を発見するというアイデアだったこともあり、技術でサポートしつつデータの関係性を見せ、分野が異なる人たちが議論するということに魅力を感じました。かつ、多くの人の役に立つ手法にできると考え、サービス化させてほしいと依頼をしたところ、快諾いただき、この共同研究に至りました。

そして、私たちのクライアントに実証実験に参加していただきながら手法やツールをブラッシュアップしていきました。今では一つのソリューションとしてクライアントへの提案も行っています」(安藤氏)

未来価値創造戦略ユニットのメンバーの中には、衛星、ロボットOS、Web3など要素技術的なものからSmart City等の分野テーマ的なものまで、多様な研究活動があり、各自が手を挙げて企画し取組んでいるという。

ソリューション開発は、基本的に将来、事業化して利益を出すことが求められる。ただし、安藤氏曰く、「必ずしも短期での成果や結果だけを求めているのではない」という。

「どれだけ真剣に取り組んでも短期でリターンが見込めないものも当然あります。ビジネスや技術の変化は早く、多方面に投資すること自体にも価値があり、挑戦してみたことで思いがけないビジネスチャンスとの出合いがあったり、逆に引くべき領域の見極めになったりもします。

そういった長期的な取り組み意義も含めて、部門としてトータルで利益につながればいいという考え方なので、狙う価値の仮説を組織内で素早く合意し思い切ってチャレンジすることができています。自分で意思をもって先端技術をインプットしやすい環境があり、これもコンサルタントとしての成長につながっていると思います」(安藤氏)

クライアントに向き合い抜いたことで得た学びや気づきが、新たな価値提供につながる

こうしたソリューション開発への積極的な取り組みや先端技術のキャッチアップが早期に可能な理由の一つが、アビームのヘッドクオーターが日本であり経営層との距離が近く、意思決定スピードが速いということだ。特に未来価値創造戦略ユニットはクライアントとのイノベーション創出に取り組んでいるチームということもあり、スタートアップ的カルチャーがあるという。

毎年チームメンバーが増える中で、若手も頼もしく成長しているそうだ。ある若手メンバーが、デジタル人材の育成プロジェクトのコンテンツ企画を担当したときのことを話してくれた。

「自分よりもはるかに経験豊富なクライアントのリーダーの方々に対し、DX時代の事業企画を推進するマインド醸成やスキル獲得の為のコンテンツ、ワークショップテーマ、フレーム設計という当時の彼にとっては少しチャレンジングなミッションが与えられました。

研修の全体設計、研修の目的に合わせたDX事例の選定や参加者の思考を促す為のフレーム作りなどを、クライアントのイメージを丁寧に確認しながら提案し、クライアントから好評をいただく研修プログラムに仕上げていったことに感心したのを覚えています。

例えば、クライアントに参考事例を紹介する場合、まずはどんな観点で伝えるのか。そして、技術、ビジネスモデル、座組、ターゲットマーケットなどクライアントに合わせた伝え方を考え、端的に伝わる研修コンテンツ資料を作成する。そして、上長にレビューしてもらい、ブラッシュアップしていくということを繰り返していました。また、ワークショップの設計の際も、試しに自分でワークシートを書いてみて、研修参加者の立場で考えやすいワークシートになっているか検証し、アレンジしていました。

そして、本番の研修中では自分が用意したコンテンツやワークシートで、ビジネスの第一線にいるクライアント社員がアウトプットしていく様子やその結果を最後まで見届けていました。

こういったプロセスの中で、彼自身も事業を考える視点やスキルを獲得し成長を遂げました。その結果、今では多様なクライアントのDX推進支援プロジェクトで活躍しています。

ビジネスの変遷が激しい昨今の社会動向に対し、まずはしっかりとアンテナを張り、クライアントには何が本当に必要なことなのか、その本質を捉え意思をもって対峙すれば新たな学びや気づきがあり、それがクライアントに対して提供する価値になる。コンサルタントはそんな仕事だと考えています。若手やキャリア入社者の方に求めるのも、誰からも何も言われずとも、深く考え、臆さず提案し、人を巻き込む行動力です」(安藤氏)

5年、10年、20年先を見据えた「価値ある社会」を提案したい

チームの立ち上げから8年。順調に実績を積み重ね人材も育ちつつあるアビーム未来価値創造戦略ユニットだが、安藤氏は現状に満足していない。「未来価値創造」という組織名が示す通り、これまで以上に、現状にとらわれない先の価値を発信し社会を変える起点となる組織を目指すという。体制もさらに拡大する予定だ。いったいどのようなチームを目指していくのか。安藤氏はコンサルタント志望の人に向けて、最後にこんなメッセージを送ってくれた。

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「未来価値創造戦略ユニットのミッションは、未来を見据えた新たなビジネスモデルの創出を、業界や産業の垣根を超えて行うことです。例えば、現代はグリーントランスフォーメーションやスマートシティといった産業領域から、社会課題の解決といった領域まで幅広くテーマが存在します。各産業のクライアント企業・デジタルテクノロジーベンダー・行政・外郭団体・アカデミア・スタートアップなど多様な事業体とのネットワークと私たちの組織が持つ多面的な知見や課題解決能力を駆使し、事業創造を通してより良い社会を創っていくことを目指しています

領域を絞りこまずさまざまな活動を行い、今何をやっているかの真の理解もあとからついてくるような、ある意味そんな組織なのかもしれません。

私たちは未来へ繋がる新しい価値を、クライアントと共に事業を創造していく——。そこに面白さを感じる人と一緒に未来をつくっていきたいです」(安藤氏)


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