27歳のエイブリー・ハイルブロンは「30歳までに月収600万円」が目標だという。
Courtesy of Avery Heilbron
2018年に大学を卒業し、ボストンの保険会社でデータアナリストとしてフルタイムで働き始めたエイブリー・ハイルブロン(Avery Heilbron)は、仕事の前後に自由に使える時間があることに気づいた。その時間を埋めるために、以前から興味のあったパーソナルファイナンスに関する書物を読み始めた。
スコット・トレンチ(Scott Trench)の『Set for Life(未訳:人生に必要な準備)』やカイ・アンダーソンの『Retire on Real Estate(未訳:不動産でリタイアする)』を読んだハイルブロンは、特にアンダーソンの本がきっかけとなって不動産投資を始めた。
「あの本を通して、不動産を投資や退職後の生活の糧にするという考え方が育まれたのです」
現在、27歳のハイルブロンは合計3軒の不動産を所有している。ボストンに2軒、現在住んでいるノースカロライナ州ダーラムに1軒だ。Insiderは、事実確認のために住宅ローン書類も確認した。
ハイルブロンは、本業である保険会社のデータアナリストとして、2021年には税引き前で9万5000ドル(約1140万円、1ドル=120円換算)の高給を得ている。
同時に、副業として不動産による家賃収入に加え、YouTubeやTikTokなどへの動画投稿、そしてパーソナルコーチングビジネスを収入源とし、約11万5000ドル(約1380万円)の収入を得ている。そのうちの大半、10万6000ドル(約1272万円)は不動産収入だ。
「理論的には、現在の投資によって、経済的自由を手に入れることができました。いつ仕事を辞めても生活できます」
とハイルブロンは話す。実際、収入の80%以上を貯蓄と投資に回しているという。しかし、ハイルブロンは決して「FIRE」(経済的自立、早期退職。Financial Independence, Retire Earlyの略)がしたい訳ではない。
「会社勤め自体は辞めたいですけど……。辞めたら辞めたで、次は何をすればいいのか分かりませんからね。さすがに一日中自宅の椅子に座っているという訳にもいきませんし」
ハイルブロンが魅力を感じているのはあくまで「FIRO」(経済的自立、選択的退職。Financial Independence, Retire Optionalの略)というライフスタイルだ。「本業はあるが、いつでも退職できる」という選択肢を人生に持つことこそが重要なのだ。
以下では、ハイルブロンが24歳で不動産投資をするために貯めたお金と、副業で1000万円以上稼げるようなるまでに実際にとったプロセスを公開する。
家賃を無料にする「ハウスハッキング」
ハイルブロンは2018年5月に大学を卒業後、ボストンのアパートに2人のルームメイトと入居した。当時、家賃は1人あたり月に1100ドル(約13万2000円)だった。
一刻も早く家を買いたいというのがハイルブロンの目標だったが、すぐにそうできるほどの貯蓄はなく、また信用履歴も積んでいなかった。卒業後何カ月か経って初めてクレジットカードを作ったというハイルブロンは、「信用情報が必要だということさえ知らなかった」という。
「そのため、最初に不動産エージェントと一緒に物件を探したときは、クレジット・スコアがないので、事前承認が下りなかったのです」
当時は実際に物件を購入するための資金はなかったが、ハイルブロンは主要都市で頻繁に開催される不動産ネットワークイベントに参加していった。そうすることで、ボストンの不動産市場の内情を知り、購入プロセスをより深く理解することができたという。
その間も、本業の給料からできるだけ多くを貯金した。それ以前にも、大学時代のインターンシップや学内アルバイトで稼いだお金で貯金を始めていた。さらに、会社から入社ボーナスも受け取った。
1軒目の購入と想定外の苦労
転機が訪れたのは2019年初頭だった。ネットワークイベントで知り合ったエージェントが、ハイルブロンにある物件の購入を打診してきたのだ。ボストンから2キロほど離れたエバレットという町にある2世帯住宅物件で、他の取引が破談となり、再び市場に出される前だった。
当時24歳だったハイルブロンはこのオファーに飛びつき、2019年3月に成約した。物件価格は52万5000ドル(約6300万円)。FHA(連邦住宅局)保障ローンで購入し、うち3.5%、つまり約1万8000ドル(216万円)を頭金として支払った。
しかし、実際に購入してみると、この物件にはさまざまな問題があった。
「まず、家の中がかなり臭かったのです……。ネズミのフンがあちこちにありました。それなのに、そこに自分が住まなければならないことに気づいたんです。契約上、保険のために30日以内に誰かが入居することが義務づけられていたので。仕方なく、仕事が終わってから寝るまでの時間を全て使って物件を改装し、住みやすい空間にしていきました」
ハイルブロンは、最初の家の改装のほとんどを自分で行った。
Courtesy of Avery Heilbron
1カ月かけて物件を改装した後、ハイルブロンはガールフレンドを誘い、1階で同居を始めた。1階にはベッドルームが2つあり、1つをガールフレンドとシェアし、もう1つはルームメイトに貸した。
ガールフレンドからは部屋の家賃の半額である400ドル(約4万8000円)、ルームメイトからは全額の800ドル(約9万6000円)を受け取った。さらに、4ベッドルームがある2階を2400ドル(約28万8000円)で家族世帯に貸した。
これで月々3600ドル(約43万2000円)の家賃収入を得られるようになり、3300ドル(約39万6000円)の住宅ローンの支払いをカバーしてもお釣りが来るようになった。
それまでハイルブロンは、毎月1100ドル(約13万2000円)の家賃を払っていたが、家賃の支払いがなくなったばかりか、毎月300ドル(約3万6000円)の利益を得るようになった。その差額1400ドル(16万8000円)は、2軒目の物件の購入資金となった。
2軒目の購入
ハイルブロンは3つの不動産を所有し、2021年には10万ドル(約1200万円)以上の家賃収入を得た。
Courtesy of Avery Heilbron
ハイルブロンが2軒目を購入したのは、1軒目から1年も経たない2020年5月だ。それは、1軒目の二世帯住宅から1マイル(約1.6km)離れた場所にある67万8000ドル(約8130万円)の三世帯住宅だった。
1軒目の購入時に使用したFHA保障ローンは、少ない頭金で購入できるため、新しく住宅を購入する人に人気があるが、一度に利用できるのは1契約のみだ。そのためハイルブロンは、1軒目のFHA保障ローンを別のローンに借り換えた。このときも頭金3.5%、つまり約2万4000ドル(約288万円)を支払った。
ハイルブロンは、それまでガールフレンドと住んでいた1軒目の二世帯住宅の一室を貸し出し、三世帯住宅に引っ越した。2軒目では3戸のうち2戸を貸し出すことで、月々3900ドル(約46万8000円)の住宅ローンをまかなった。
現在、ハイルブロンは2021年夏に引っ越したノースカロライナ州ダーラムにガールフレンドと住んでおり、ボストンに所有する5戸は全てテナントで埋まっている。
ハイルブロンは、引っ越し先のダーラムでも別の多世帯住宅を購入して「ハウスハッキング」を続けたいと考えていたが、ダーラムにはあまり売りに出される物件がなかった。そこで、次善の策として離れガレージ付きの住宅を購入した。現在は改装中で、将来的にはAirbnbで貸し出す予定だという。
副収入で11万5000ドル(約1380万円)
30歳までに経済的な自立を目指すハイルブロンは、高い目標資金の達成を加速するために、複数の収入源を確保している。2021年は、さまざまな副業から約11万5000ドル(約1380万円)の収入を得た。
その大半となる10万6000ドル(約1272万円)は不動産収入で、内訳としては二世帯住宅から5万5000ドル(約660万円)、三世帯住宅から5万1000ドル(約612万円)を得ている。
ハイルブロンは、家賃収入をパッシブ(受動的)収入に分類しているが、常にパッシブな訳ではない。
「それぞれの物件を購入した最初の3〜6カ月は、これまでで最もアクティブな対応が必要でした。トイレの水漏れなど、何か問題があればその地域で信頼している便利屋に問題を解決してもらい、私がオンラインで支払うのです」
最近では、ハイルブロンが不動産ポートフォリオにかける時間は月に2、3時間程度だという。
さらにハイルブロンは、パーソナルコーチングやYouTube、TikTokなどのソーシャルメディアからも副収入を得ている。彼の動画は、パーソナルファイナンスと不動産投資が中心だ。2021年末に実験的にTikTokを始めたばかりだが、2022年には大きな収入を生み出し始めており、いずれ本業の収入を上回るだろうと予想している。
TikTokを始めた当初は、1日に3~4本の動画を作成し、フォロワーを増やした。フォロワーが20万人近くになった今では、1週間に14本近くの動画を作っているという。そのうち1本は、特定の商品やサービスを宣伝する「ブランデッド・コンテンツ」だ。
TikTokでのブランデッドビデオ1本あたりの金額は、約2500ドル(約30万円)だという。「企業がInstagramのリールへの再投稿を希望する場合は別料金をもらっています。手堅い収入源になりますよ」と述べる。
正しく活用すれば、ソーシャルメディアは比較的簡単で低コストに作成でき、かつ迅速に在宅での副業を始めることができる方法だ。しかし、長期的な富を築きたいのであれば、「不動産が100%ベストだと思う」とハイルブロンは言う。
時間と忍耐力、そしてある程度の貯蓄が必要だが、正しく行えば「キャッシュフローを生み出すことができ、長期的な視点を持っていれば物件の価値も上がる。税制上の優遇措置も受けられる」と語る。
所得の80%以上を貯蓄・投資に回す
2021年にノースカロライナ州ダーラムに移住したハイルブロンとそのガールフレンド。
Courtesy of Avery Heilbron
高収入と節約志向のおかげで、ハイルブロンは毎月、収入の80%以上を手元に残しているという。
貯蓄の大半は、将来の不動産投資のために利率の高い普通預金口座に預けている。不動産を購入する機会があった場合に備え、その資金をすぐに使えるようにしておきたいからだ。
65歳までに100万ドル(約1億2000万円)を確保するにはいくら投資すればいいのかを試算したうえで、ハイルブロンはETF(上場投資信託)にも毎月300ドル(約3万6000円)投資することにした。
個人年金ロスIRAと会社が提供する年金401(k) プランの2つの退職金口座にも投資しているほか、仮想通貨とNFT(非代替性トークン)にも投資している。
貯蓄に回すお金を増やすには、「住居費」「交通費」「食費」の3つの支出を減らすことに重点を置くといいとハイルブロンは話す。コーヒーなどの細かいものにいくら使うかにこだわるより、大きな支出を減らす方法を見つける方がずっと効果的だとハイルブロンは考えている。
主要な支出を切り詰めるには、当初は犠牲が必要かもしれない、と彼は指摘する。
「もっと安いアパートに引っ越すか、ルームメイトを作る必要があるかもしれません。車を処分するのもいいでしょう。外食をやめて、料理の仕方を学ぶのもいいかもしれません」
しかし、その犠牲は必ずしも永遠に続くわけではなく、長い目で見れば報われるはずだ。
収入を増やす方法を見つけることで、貯蓄率を上げ、経済的な目標を早く達成することができる。30歳までに月5万ドル(約600万円)を稼ぐという収入目標を掲げたハイルブロンは、「お金がお金を増やしてくれます」と話す。
「仕事を変える、昇進する、副業するなど、もっと稼ぐ方法を見つけることができれば、物事はもっとシンプルになるはずです」
しかし、そもそも貯蓄することを学ばなければ、長期的な富を築くことはできない。
「今、月に5ドル貯められないなら、もっと稼げるようになったときに月に5000ドル(約60万円)貯められる訳がありません。もっと稼いでも、それを貯蓄や投資に回さなければ無意味ですからね」
※この記事は2022年3月28日初出です。