Shain Vernier
シャイン・バーニア(Shain Vernier)氏は、主に原油、金、通貨を扱う専業トレーダーだ。彼は戦略として、市場の方向性の推測や価格予測をすることを避けている。彼のアプローチは、素早く参入して素早く撤退するというものだ。
トレードをしていないときは、HowToTrade.comでテクニカル分析の使い方を教えるオンラインコーチをしている。Business Insiderとの以前のインタビューでは、彼は主な戦略の1つである、フィボナッチ・リトレースメント(フィボナッチ数列を利用するテクニカル分析の手法)を使った、価格のボラティリティを利用したトレードについて説明してくれた。
インタビューの中で彼は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油先物を取引するためのもう一つの戦略について述べている。先物は、契約満期日に資産の引渡しの権利を買い手に「理論上」与えるものだ。ファンダメンタルズの影響を受ける企業の株式とは異なり、原油などのコモディティ(商品)は需要と供給に基づいて好況と不況のサイクルを繰り返すため、周期的な予測可能性が生まれ、月単位、週単位、さらには日単位で同じ取引をする機会が生まれる。
そのためにバーニア氏は、月、週、日ごとに、自分が取引している先物限月(通常出来高が最も多い直近に満期を迎える限月)の最高値と最安値をチェックしている。すべてのトレーダーが見ることができる重要なレベルを形成するからだ。こうしたレベルは通常、市場に注文の流れをもたらすと彼は指摘する。彼は、前回の高値をわずかに上回る逆指値の買い注文を入れることを狙っている。
例えば、前週の高値が80.85ドルだった場合、彼の注文は80.86ドルに設定される。これは、価格が上昇し始めると、より多くのトレーダーが市場に引き寄せられ、値動きが活発になるという仮定に基づいている。
トレーダーが高値で買い続ける理由は多くあるが、主な理論の1つは、価格が以前の高値を上抜けると、空売り(有価証券を借りて売却し、後に安い価格で買い戻して差額を手にする)トレーダーを引き寄せるというものだ。しかし、ある証券が割高に感じられると、空売りトレーダーがポジションをカバーするために有価証券の買い戻しを始めるショートスクイーズが起こる。買いが増加すると価格がさらに上昇する。バーニア氏はそのわずかな値上がりから利益を得ているという。
バーニア氏は、価格が過去の高値まで戻ると多くの売り手が出現すると予想し、下落リスクを避けるため、過去の高値を下回る価格で買い注文を入れないようにしているという。
例えば、2月28日、CMEのWTI原油の4月限を1月の高値79.09ドルに迫ったときに5枚購入した。彼はトレーダーが買い注文に参加し、空売り筋が反対売買を始めると、出来高が急増すると予想し、買い注文を79.10ドルに設定、許容できるスリッページは2ティック(0.02ドル)とした。ストップロス(損切り)は直前の5分足の下、78.79ドルに設定した。当初の利益目標は79.40ドルだったが、原油市場への参加者が増え、予測不可能な状況が生まれる時間帯であるアメリカ東部時間の午前9時に取引していたため、79.24ドルで早めに売却した。
下のチャートはバーニエ氏のトレードのイメージだ。
TradingView
リスクを軽減するため、彼は利益の期待を非常に低く抑え、数セントの利益、つまり約0.08ドルから0.10ドルを狙っている。これにより、エクスポージャーを短くしてリスクを下げ、勝率を高めているのだ。この戦略での平均保有時間は20秒から1分であることが多いという。これらは本当に素早い取引なので、すべてブラケット注文を通じて行われる。つまり、エントリーポイントが決まったら、買い注文とストップロスが同時に設定されるということだ。
さらなるリスク軽減のために、彼はポートフォリオの1%から3%しか取引しない。例えば、証券会社の残高が1000ドルの場合、彼は30ドルで取引を行う。
この戦略の利点は、毎月、毎週、時には毎日、予測可能な取引ができることだ。彼は、前日の高値での取引は、長い期間にわたって観測されている月足と比較して時間枠が短いため、リスクが高いと強調した。彼はBusiness Insiderに対し、月足に基づく取引で90%の勝率を誇っていると語っている。週足では勝率は75~80%、日足では60~70%程度に落ちる。彼が高い勝率を維持できるのはスキャルピング、つまり少額で素早く利益を上げるからだと強調する。より高い利益を狙うトレーダーはリスクを増やし、利益の確率を下げてしまう。
ただし、彼が取引を避けるケースもある。1つ目は、約定のロールオーバーの量が多い場合だ。これは、トレーダーが限月サイクルを終了し、翌月の限月を取引し始めることで、出来高が希薄になり、値動きに一貫性がなくなることを意味すると彼は指摘した。また、地政学的不安定や戦争勃発が報道されたときは、不確実性が増すため、原油先物の取引は避けている。
また、それ以外の重要な市場変動要因である、米国石油協会が火曜日に、米エネルギー情報局が水曜日に発表するアメリカの石油供給報告の近くでは取引を避けているという。これらは市場に参加者を増やし、過度のボラティリティと予測不可能性を生じさせるからだ。