あなたは感染してない? 万年金欠病「ライフスタイル・クリープ」の特徴と回避方法

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退職後の生活や緊急時に欠かせない貯蓄をむしばむライフスタイル・クリープにご用心。

Rachel Mendelson/Insider

  • 収入が増えるにつれて、支出も増えていくパターンは、ライフスタイル・クリープ現象と呼ばれている。
  • ライフスタイル・クリープは、昇給があったとき、高収入な職場への転職後、あるいは借金の返済が終わったときに起こりやすい。
  • 生活防衛資金や老後資金がない場合は、ライフスタイル・クリープが起きていると考えられる。

給料が上がれば預金口座にあるお金も増えると考えがちだが、必ずしもそうなるとは限らない。実際、ライフスタイル・クリープが起こっていると、給料が増えても手持ちの現金が減ることもある。

ライフスタイル・クリープが起きると、収入が増えたあとに支出も過剰に増える。つまり、ライフスタイルにインフレーションが起こる。たとえば、転職して手取りの年収が2万ドル(約300万円)増えたことを理由に、(絶対に必要ではないのに)3万ドル(約450万円)で新車を買った場合、転職前よりも借金が増えることになる。ライフスタイル・クリープは何年もかけてゆっくりと進行することが多いため、普段から自分の収支に注目していないと、なかなか気づけない。

以下、ライフスタイル・クリープについて知っておくべきこと、自分が感染していないかを診断する方法、そして、今後の避け方を紹介する。

ライフスタイル・クリープとは?

収入が増えたときに、増えた分の収入を貯蓄に回すのではなく、支出を増やしてしまうことをライフスタイル・クリープと呼ぶ。ローンを返済し終えたのちに、余った現金を貯金せずに使ってしまうのも、クリープ現象だと言える。

「ライフスタイル・クリープが原因で、収入が増えたのに貯蓄計画に悪影響が出たクライアントをたくさん見てきた」とEPウェルス・アドバイザーズ(EP Wealth Advisors)のロサンゼルス地区ディレクター兼パートナーのクリント・カムア氏は言う。

ライフスタイルにインフレーションが起こると、エンターテインメント系のサブスクリプションや頻繁な外食など、昇給前にはなくても平気だったものが必要不可欠に思えてくる。物品の購入だけが問題ではない。ライフスタイル・クリープの影響で、新しい体験に対する支出も増えることがある。

「一例を挙げると、あるカップルは住宅ローンを返し終えてから、それまで返済に充てていた資金を使って、毎月のように旅行するようになった」と語るのは、ホムリッチ・バーグ・ウェルス・マネジメント(Homrich Berg Wealth Management)でプリンシパルを務めるロビン・エイケン氏だ。そのカップルは、新たに生じた余裕の一部もしくは全額を預金口座に預けるのではなく、全額を旅行に費やしたのだ。

ライフスタイル・クリープの感染経路は?

通常、以前より給料の多い職場に転職する、借金を完済してそれまで返済に充てていた資金が浮くなどといった場合も含めて、なんらかの形で収入が増えたときに、ライフスタイルのクリープ現象が始まる。いったん始まると、新たに入ってきた現金が、あっという間にまた出て行ってしまう。

ライフスタイル・クリープが問題なのは、そのせいで退職後や緊急時に必要になる資金を確保できなくなるからだ。アメリカ合衆国の労働者のおよそ半分が、借金を返済しなければならないため、退職後の生活のために十分な貯金ができないと主張する。もちろん、すべての借金がライフスタイル・クリープを原因としているわけではないが、不必要なものを買うために支出が増えているのであれば、ライフスタイル・クリープが生じていると考えられる。

収入が増えるにともない、支出も増えるのは普通のことだ。がんばって働いてお金を稼いだのだから自分に褒美を与えたいと、誰もが思う。「問題となるのは、ライフスタイルのインフレーションが収入の増加を上回る場合だ」とカムア氏は言う。「そうなると、退職後のための貯蓄ができなくなり、生活防衛資金が減り、場合によっては借金が増えてしまう」

誰もが、ライフスタイル・クリープに感染する恐れがある。免疫をもつ者はいない。高収入ではないから大丈夫、スポーツカーを買わないから心配ない、ということではない。平均的な収入を得ている人も、裕福な家庭も、同じように感染する。誰だって、料理する時間がないから毎晩のように外食するしかないとか、新しい職場のために数週間に1着は新しい衣服を買う必要があるなどと思い込む恐れがある。

クイックヒント:予算や支出のパターンに完璧はない。しかし、自分の支出状況を頻繁に確認することで、コースを逸脱したときに素早く対処できるようになる。さもなくば、長年にわたって貯蓄目標を下方修正することになり、結果として経済的に大きな損害を被ることになる。

ライフスタイル・クリープが始まっている兆候

  1. 貯蓄が増えない。「昇給やボーナスがあってから数年がたっても貯金が増えていないなら、増えた分の額を毎年余すところなく支出に使っていることになる」とエイケン氏は言う。貯蓄を優先しなければ、全体的な経済状態に悲惨な影響が出るだろう。
  2. 生活の多くの、あるいはほとんどの分野で支出が増えている。支払い能力に自信があるから全体的に支出が増えていると気づいたのなら、ライフスタイル・クリープが始まっていると考えたほうがいいだろう。外食が増えたり、以前より高価なプレゼントを買うようになったり、豪華な旅行をしたり、新しいメンバーシップに登録したりしているはずだ。
  3. 予算を管理しない。自分のお金がどこに流れていくのかを知らなければ、ライフスタイル・クリープが起こりやすくなる。毎月どれだけのお金が余分な支出に使われているかを知らなければ、自分でも気づかないうちに過剰に支出してしまいやすくなる。
  4. 自分の収支管理に自信がない。銀行の残高を見るたびに、自分がお金を使いすぎていることを思い出してストレスを感じる? それどころか、残高が目減りしていたり、クレジットカードの負債が増えていて、怖くなったり、後悔したりしている? 思い当たる節がある人は、支出が収入を超えている証拠だ。

ライフスタイル・クリープの予防法

専門家は、ライフスタイル・クリープの犠牲にならないためにすべきことをいくつか提案している。何よりも重要なのは、予算を立てることだ。予算を見直すことで、支出を一定に保ちやすくなる。「少し極端な例だが、新しい車や別荘に資金を費やしていることに気づいたら、そうしたことにお金を使っても、予算計画に悪影響が出ていないか、確認するようにすべきだ」とカムア氏は言う。自分の支出を把握するために、予算管理アプリなどの利用を検討しよう。

加えて、ほかのことに支出するよりも先に生活防衛資金と退職後用の貯金を確保すること。「ライフスタイルの改善のために支出を増やす前に、生活防衛資金が確保できているか、退職後のための貯蓄を減らさずに済むか、消費者負債が増えないかを必ず確認することが重要だ」とカムア氏は言う。昇給後もクレジットカードの負債やローンを増やさないように最善を尽くせば、昇給で生じた利点を損なうことはないだろう。

貯蓄が適切にできていれば、過剰な支出による長期的な悪影響を最小限に抑えることができる。またエイケン氏は「貯金はできるだけシンプルに」と提案する。給料日に預金口座に自動振込されるように設定しておけば、そのお金を別の目的に使う時間さえ残らない。

クイックヒント:賃金の増加を見越して、前もって計画を立てておこう。エイケン氏は、昇給やボーナスのたびに確定拠出年金への拠出額を増やすことを提案している。そうすることで、今のライフスタイルを犠牲にせずに、貯蓄をふやせる。

最後に、たまに少し散財してしまうことがあっても、くよくよしないこと。「ときどき贅沢をして自分を甘やかすのも大切なこと」とエイケン氏は言う。そうしながら、大きな全体像に集中し続けよう。

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