エリック・シュミット元グーグルCEOは、同社を退社後、テックやAI関連企業に投資している。
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グーグル(Google)の元CEOのエリック・シュミット氏は、AIに関してアメリカは中国の「ずっと先を行っている」と考えている。
シュミット氏は2024年5月7日のブルームバーグとのインタビューでこのように述べている。
「人工知能に関しては、我々は中国よりかなり進んでいて、2、3年ぐらい先にいっています。これはこの世界では長い時間ですから、我々はかなり良い状態にあると思います」
シュミット氏は2001年から2011年までグーグルのCEOを務め、2015年まで会長を務めた。退任後、シュミット氏はアンソロピック(Anthropic)社を含む様々なAI企業に投資している。また、2016年には国防総省のイノベーション委員会の委員長に就任し、人工知能に関する国家安全保障委員会の委員長を3年間務めた。
シュミット氏は、アメリカが先行している状態を保ち続ける限り、このAI競争に勝つことができると述べた。中国は特定の産業で圧倒的な力を持つことに注力しているため、アメリカは彼らと競争し、勝利する必要があると語った。
2024年初頭、中国は半年間で40以上のAIモデルを承認し、うち14の新しい大規模言語モデルは1週間のうちに一般利用が承認された。「中国のグーグル」と呼ばれる検索エンジン大手のバイドゥ(Baidu)がその先頭を走っている。
シュミット氏が、中国がAI競争で遅れをとっているとの見解の根拠となった4つの要因について語った。
半導体不足
シュミット氏は、中国は「半導体のせい」で苦労しているし、半導体不足に陥っている」と述べた。
同じく5月7日に行われたCNBCとの別のインタビューで、シュミット氏は、トランプ政権とバイデン政権が高速チップ、特にエヌビディア(NVIDIA)製半導体への中国のアクセスを制限したため、中国が遅れをとっていると述べた。
「彼らはこのことについて、間違いなく怒っているでしょう」
チップは、AIをスケールアップさせるための重要な部品である。米中間の緊張により、アメリカ政府は半導体の国産化を推進している。2023年11月、商務省は、中国がアメリカのメーカーから高度なAIチップを輸入しにくくする「高度コンピューティング・チップ規則(Advanced Computing Chips Rule )」を施行した。
2024年3月、バイデン政権はファーウェイ(Huawei)に関連する複数の中国半導体企業への制裁を検討した。
(編注:米商務省は5月8日までに、インテルなど2社に出していたファーウェイ向けの半導体輸出許可を取り消した)
AIを訓練するための中国語の教材は少ないと考えている
CNBCでシュミット氏は、大規模な言語モデルを学習させるために使える中国語の教材はそれほど多くないとも述べた。インターネットの世界では英語が凌駕しており、大規模な言語モデルが学習する研究論文、書籍も英語のが情報として多くなると彼は考えている。
「そのため、大規模言語モデルでは英語が非常に強いのです」(シュミット氏)
さらに、ほとんどの学習データは英語であるため、他の言語では誤解や誤った解釈が生じる可能性がある、とシュミット氏は言う。
資金の減少
シュミット氏によると、中国では、外国からの投資や潜在的なリスクがあるベンチャーキャピタルも大幅に減っているという。一方、アメリカはこれらの分野で爆発的な成長を遂げているという。
中国経済はここ数年落ち込んでおり、デフレの問題に直面し続けている。
2023年11月、中国は、アメリカと緊張関係が続き、他の西側諸国が中国ビジネスへの関与から遠ざかる中、初の対外投資赤字に見舞われた。
誤った分野に集中
グーグルの元CEOは、中国は民間のアプリ会社の設立に力を入れていると述べた。最終的に成功する企業もあるかもしれないが、それらはプラットフォームに特化したものではないという。
「アメリカでトップクラスのアプリの3つか4つは、実は中国から来たものです。しかし、現時点で、この分野のリーダーはアメリカです」
TikTokのようなアプリは成功しているが、基礎的なAIのモデルを作ることに関しては中国は遅れていると考える業界専門家もいるとCNBCは報じている。
「今ここにいることを我々は誇りに思うべきです。アメリカは、AIや量子技術など人々に語られる技術で形成される未来、特別な未来を発明したのです。うまくやれば、この先10年、20年と世界を凌駕できる可能性があります」(シュミット氏)
2024年2月28日、Business Insiderの親会社であるアクセル・シュプリンガーは、他の31のメディアグループとともに、グーグルの広告慣行によって被った損失を主張し、グーグルに対して23億ドル(約3600億円、1ドル=156円換算)の訴訟をオランダの裁判所に起こした。